
まずは前回お話の『研修が変わってきたから「教える」から「学び」へ』の3つの要点を復習します。
(1)どこの会社でも効果の上がる研修プログラムはない。
⇒その会社、研修参加者ごとに何が効果的なのかを考える
(2)効果的な集合研修を実施することが研修ではない。
⇒集合研修は、職場実践を開始するためのキッカケづくり
(3)研修講師が「教える」研修より、研修参加者が「学ぶ」研修へ
⇒研修で気づく、ヤル気になることより職場での実践継続が大事
これは、とりもなおさず、私度もの会社の研修企画・実施の基本となる考え方でもあります。
このように考えながら、特に上記の(2)(3)に関して実際の取り組み方が今回のテーマです。
これまでの約9年間様々な民間企業や公的機関、病院などの研修を企画・実施してきた
なかで「職場での実際に役立つ」と言う観点で取組んできたことを以下に5つ簡潔に述べます。
1.研修参加者に事前に、研修テーマに関する仕事や職場をふり返ってもらう。
ほとんどの研修で、事前に研修参加者の方々に事前課題として研修テーマに関して
仕事や職場の課題・問題を考えてきてもらいます。余裕があれば事前提出又は
研修当日に持参いただきます。そのための「事前学習シート」を各研修ごとに
作成します。事前に問題意識を持ってもらい、研修への動機付けに役立ちます。
2.参加者の仕事や職場の現状、現実課題・問題の「聴き合い」の場をつくる。
研修の導入又は各セッションの開始時点でそのテーマやセッションに関する
現実課題・問題などを参加者同士でお互い「聴き合う」場をつくります。参加者の
一番の関心事は自分の仕事自分の職場で起こっていること、問題です。
悩みや多少の不満が出る場合もありますが、問題の共有化や問題意識の醸成
などに役立ちます。
3.最低一つ以上の現実課題や問題の実例を参加者に考えてもらう。
現実問題でも、そのテーマについての専門家であり、客観的に判断できる研修
講師が理屈に則った正論の答えを示すことは比較的容易です。しかし、研修講師
がそのような答えをすぐ出すよりも、研修参加者に考えて自分たちの答えを出して
もらうことが大事です。もちろん、職場で考えるよりも多様な視点で、考えを深める
サポートが必要となります。いわゆる「現実問題のコーチング」をおこなうことです。
4.研修の場だけの学びに終わらせず、職場で取組むことを決めてもらう。
研修で気づいたと感動するだけでは落語やコンサートのイベント参加の聴衆
と同じで、すぐに思い出になってしまいます。研修をキッカケとして職場で取組む
課題・目標を明確にして「職場実践計画シート」などで行動に移すようにします。
5.職場実践のフォローとふり返りをすることで、さらなる学びを継続させます。
研修で決めた取り組み課題のふり返りは参加者の自己責任、フォローアップは
本来、上司の任務でしょう。しかし、それが必ず実行できるようならそもそも
研修などしなくてもよい職場かもしれません。
数ヵ月後にフォロー研修と言うのが望ましいのですが、それもコスト面で簡単
ではありません。本人のふり返りのために「メールコーチング」(メールで実践計画
の実施状況やふり返りをトレーナーにレポートして、フィードバックやアドバイスの
コメントを返信)を実施します。
他には、「上司の報告して、その結果をさらにレポートしてもらう方法」などです。
その他にも小さな工夫はまだまだありますが。
今回はこの5つにまとめてみました。
以上に書いてあることは、そうたいしたことではないかと思われるかもしれませんが、
受講者が現実問題を持って研修に臨んでくること、そして課題や目標を持ち帰るように
することは「教える」ことが得意なだけの研修トレーナーにとっては大変なことなのです。
何が出てくるのか分からない研修になるのですから・・・(だからこそ面白い!と最近の
私は思っています)。
次回は、そもそも役に立つ研修をするために「本当のお客様は誰か?」と言うテーマで考えていきます。』
〔平成19年11月11日記〕
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